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肩甲骨辺りまで伸びた、青みがかった銀髪に、その美しいボディラインをなぞるかのような、青を几帳としたワンピース。
「あ、いや……貴女が慧音さん、ですか?」
想像していたのとギャップが激しすぎるせいか、蓮次は少し動揺しながらもそう言った。
「ああ、そうだが、その服……外来人か?」
やっぱり見分け方は服なのかと、蓮次は思いながらも頷き、今までの経緯を説明した。
場所は変わり、あらかた経緯を離し終えた蓮次は、慧音宅の居間に居た。机を挟んだ先には、慧音が姿勢良く正座して座っている。
「……ふむ、落ちたとなると、やはりスキマ妖怪の仕業か」
「隙間?」
ミスティアは鳥の妖怪だし、まさか隙間の妖怪も居るんだろうかと、変なことを蓮次が考える前に慧音が続ける。
「八雲紫(ヤクモ ユカリ)という、この幻想郷で最強の妖怪が居てな。彼女はいつも空間の裂け目から突然出てくる。その裂け目を隙間に例えて、皆はスキマ妖怪と呼んでいるんだ」
空間の裂け目と言われても、あまりピンと来ない蓮次だが、彼がこの世界に来てしまったのは、その八雲紫という妖怪の仕業ということだけは把握できた。
どうやったのかは、知らないが。
ともあれつまり、その八雲紫を何とかすれば、元の世界に帰れるかもしれない。
(……どこのRPGだよ)
この状況で、そう思わずにはいられなかった。
「それで外界へ帰る方法だが、一番手っ取り早いのは、やはり博霊神社だろう」
「え? 八雲紫って妖怪を何とかする必要は無いんですか?」
その必要があると思い込んでいた蓮次は、随分と呆気に取られたようだ。
「まぁ、八雲紫に直接送り返してもらうという手もあるにはあるが、どこにいるか解らない上に、その頼みを了承するのかも怪しい。その点、博霊の巫女はそれが仕事の一環でもあるし、一日のほとんどを神社で過ごしているからな、確実だ」
「成る程……じゃあ今すぐにでも───」
「待った。もう外は暗いし、人里の外は危険だ。明日になるまで待った方が良い」
確かに、蓮次は先程もミスティアという妖怪に出会っている。本当なら襲うつもりだったらしいし、また妖怪に会った時も見逃してもらえるとは思えない。
じゃあ今日の寝床はどうするのかという問題がすぐに出てくるのだが、
「今日は、ここに泊まっていけ」
まぁ、そうなるんだろうなと心の中で思いつつ、蓮次は首を縦に振った。
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