初めてのお使い〓ドライニア潜入〓

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ロープを登り通気孔にたどり着くと、一人の女性がオービィに向かって木の棒を振り回していた。 「きゃーきゃー!あっちいってよぅ!」 腰が抜けた様子で、鉄の地面に倒れ込んで眼には涙が滲んでいる。 「ワフゥ…」 敵意は感じるが、脅威は感じていない様子のオービィは、少し困惑した表情で此方を見ている。 「はは…」 呆れた様に笑ったキースさんは、女性に声をかける。 「大丈夫だよネイト、その子は魔物でも僕達の味方だよ」 「あ、キース」 どうやら今此方に気付いた様だ。 ネイトと呼ばれた女性が木の棒を振り回す手を止めると、オービィはオレの足元に歩いて来た。 「それ、あなたの?」 むっ…… 「コイツにはオービィという名前が有ります。それ呼ばわりは止めてください」 「え、あ、あぁごめんなさい。まさか魔物に名前が有るなんて思わなくて」 意外そうな顔をするネイトさんに、オレは疑問を投げる。 「この国の兵士はドラゴンに乗ってると聞いたんですけど?」 ようやく抜けた腰が治ったのか、ネイトさんはよっこらしょと立ち上がる。 「確かにこの国の「騎士」は他国の馬に跨がる代わりに、ドラゴンに股がってるわ。でも、それはドラゴンの中でも下位種のワイバーンだったり、空を飛べないアースドラゴンが主で、ドラゴン達に名前何て無いわよ。そもそも、下位種のドラゴンは名前を付けても理解する知力は無いわ」 「自分のドラゴンは、どうやって識別するんですか?」 「番号ね」 成る程。人間にとっては所詮ドラゴン達は乗り物にすぎないし、ドラゴン達にとっては、餌欲しさに要求されることをこなすだけの関係…と。
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