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通気孔は思いの外大きく、大の大人が普通に歩ける程の高さがあった。
身長が190cm位あるオレが立って移動出来るんだから、相当だ。
移動している間に、二人の仲を聞いた。
昔…といっても、2年位前だが、ドライニアは当時鎖国もしていなければ、武力を頼りに政治をしていなかったそうで、ステッドマンとも外交があったらしい。
外交の為、ステッドマンに来て城の客間にいたネイトは、当時19歳だったにも関わらず、初めての外国に心踊らせて部屋を抜け出し、城下町に遊びに出たそうだ。
初めて見るものも多く、夢中になったネイトは日が暮れて、城への帰り道も分からなくなった状況で、所謂スラム街に迷い込んでしまったらしい。
上質な服を着込み、背中まで伸びたブロンドの髪を揺らして歩く美少女をスラムのゴロツキが見逃す筈もなく。
拐われそうになってしまったネイトを、たまたま、偶然見つけたキースさんが助けたそうだ。
それからは、主にネイトがキースさんの事を気に入って、城下町に遊びに行く度に護衛に指名していたらしい。
……という事をネイトが話していた。
キースさんがネイトを助けたシーンを話すときの彼女は、正に恋する乙女の目だった。
「あんなバッチリのタイミングで助けてくれるなんて、運命に違いないわ!」
「…まぁ、本当は城から抜け出すネイトを見付けたから、後を付けてたんだけどね」
と、オレにしか聞こえない声でキースさんは言っていた。
「素手でゴロツキをバッタバッタとなぎ倒し!」
「まぁ、倒したのは二人だけだったけどね」
「迫り来る追っ手から私を守る為にその場に残り!」
「その場に残ったのは他の兵士に引き継ぎをする為だったんだけどね」
…どうやらネイトの話は80%程美化されている様だ。
「なぁ、ネイト」
ネイトには悪いが、質問で話を遮る。
因みに言葉使いはネイトが年下と分かり、ネイト自身も良いと言ったので、気楽に呼び捨て、敬語抜きで話している。
「今向かってる、「私達」が使ってる小屋って何だ?」
その言葉を聞いたネイトは、ニヤリと笑みを浮かべてオレを見た。
「ふっふっふ…それはねぇ…」
ネイトが腰に手を当て、ふんぞり返り、申し訳程度の胸を張る。
「ドライニア救国隊の本部がある、秘密基地なのだ!」
…さっき小屋って言ってたじゃんか。
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