初めてのお使い〓ドライニア潜入〓

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中は不気味な程に静まっていた。 別に達人とかでは無いが、人がいる気配は無い。 「どうですか?キースさん」 よく分からないから、プロの兵士に聞く。 「いやぁ…何とも。何も無いね。人が「居た」痕跡も」 そう言ったキースさんは、ネイトを見詰める。 「な、何?」 見詰められるネイトは、キースさんの目に滲む疑惑を感じて動揺する。 「私を疑ってるの?!」 おいおい、マジかよ。 疑惑の目をネイトに向けると、動揺は大きくなる。 「ち、違う!私は…!」 「ヴァウ!」 その時、外でオービィが吠えた。 あいつ、一緒に中に入らなかったか? 「どうした、オービィ……うっ!」 掘っ建て小屋の裏側に位置するその場所で、オービィが掘ったと思われる穴。 そこには4つの死体があった。 「うっ…おえぇ…」 堪えきれずに胃の中の物を吐き出す。 鋭い刃物で切り裂かれた様なキズ、初めて見る人間の内蔵。 そこからする刺すような鉄の臭い。 「どうした!…むっ…」 遅れてやって来たキースさんも、穴の死体に気が付く。 その後ろから来たネイトの目を覆い、死体を見せない様にしている。 「これは…ネイト、地区の代表と言うのは何人だ?」 「え、え?確か7人だけど」 何が起きているのか分からない様子のネイトは、戸惑いながらそう言った。 「ワフゥ…」 心配しているのか、オレに寄り添ってくるオービィ。 粗方吐き出したオレは、ようやく落ち着いた。 「悪いオービィ。大丈夫だ」 オービィの頭を撫でて、立ち上がった。 「キースさん、これは…」 「恐らく、代表7人の内の4人だろうね」 死体を見ても冷静なのは、やはり兵士だからだろうか。 「!…グルルルゥ」 そこで更に何かに気付いたのか、オービィが唸り声を上げる。 オービィの目線の先には、武装した兵士達が立っていた。 「あ、あれはドライニアの軍…!」 兵士の様子を見てみると、全員胸にドラゴンの顔を模したエンブレムを付けている。 「裏切ったのは、ここにいる4人以外の3人みたいだな」 キースさんは死体をチラリと見ると、兵士に目を戻して剣を抜いた。 「セージ、やれるかい?」 人と、斬り合う? 出来るのか? 思わず戸惑うが、敵は待たない。 「ちっ」 舌打ちをしたキースさんは、ネイトを守る立ち回りで、敵に走り出す。 「ガルルァ!」 それに続く形で、オービィはオレを守る立ち回りで敵に駆け出した。
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