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……その時の祖父が伝えたかった本当の事何て、今も分からない。
祖父の口癖。
「戈を止めると書いて「武」矛盾しているのかも知れないけど、私は文字に込められた思いを、この流派に込めた」
幾度と無く聴かされた言葉。
何か吹っ切れたオレは無言で正宗を鞘ごと腰から抜いた。
「セージくん!」
オービィが巧く立ち回ってくれていたのだが、限界だったのか、一人の兵士が此方に走ってきた。
「……やってやる」
腰を落として、左手に正宗。
右手で鯉口を切る。
「おぉぉぉお!」
兵士が剣を振りかぶって、目の前に迫った。
「ヴォン!」
オービィの哭き声が聞こえる。
剣が頭上に迫った瞬間に、右手が動いた。
「閃舞(せんぶ)」
左腰から右頭上への一閃。
その一瞬で兵士の剣は真っ二つに折れ…いや、折れたと言うより、斬れたと表現した方が良い。
更に兵士の冑が正面から綺麗に分かれた。
「なっ…!」
「掌劇(しょうげき)」
驚いている兵士に鞘を持ったままの左手の掌底を顎に喰らわす。
「旋蹴楽(せんしゅうらく」
顔を仰け反らせた所に、右足での後回し蹴り。
右の踵が兵士のこめかみに入ると、兵士は白目を向いて気絶し、右方向へと倒れる。
技から技へ、流れる様な連携。
それがこの流派の真骨頂だ。
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