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「そもそも、何でこんなことになるかなぁ…」
オレが請けた仕事は、あくまで情報の入手。
ネイトを保護した時点で終了している。
「セージ、一度ステッドマンに戻るぞ」
ネイトは恐らく泣いていたのだろう。
目が真っ赤になっている。
「俺達の任務は情報収集だ。ネイトがステッドマンで証言すればセージの無実は証明出来るし、ドライニアを攻める口実も出来る」
それは、戦争が起きるって事か…
でもオレ達には関係無い。
リーナと合流して、直ぐに出ていけば良いだけの話しだ。
「その為には入ってきた通気孔に戻る必要があるし、あそこに行くためにはあの小屋がある広場を通り抜ける必要がある、恐らく大勢の兵士が居る」
「大丈夫だ、キース。オレはやれる」
そう、約束したんだ。
リーナと。
「でも、オレは誰も殺さない。敵も、味方も…甘くても良い。オレの目の前では絶対に死なせない」
自分に言い聞かせながら、キースを見る。
「分かった、俺も殺さない。少なくともセージの前では」
キースの言葉は真剣その物で、それがとても嬉しかった。
「それじゃ、行くぞ」
キースがネイトの手を握ると、ネイトも決心が付いたのか力強く頷いてキースの後を追っていった。
その姿が兄妹にしか見えなかったが、それを言えばネイトが絶対に怒るだろうな。
そんな下らない事が考えれる位の余裕は、出てきたみたいだ。
「戈を止めると書いて武……この痛みを感じなくなったら、人じゃない…」
まだ少し殴った感触のある右手を見て呟く。
「だよな、じいちゃん」
何となく、朧気ながらじいちゃんの口癖とあの日言ってくれた言葉の意味が分かりそうな気がして、嬉しかった。
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