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僕は先に出て行った亜印さんと二時間程度の間を置いてホテルをチェックアウトした。
亜印さんの涙の理由は分からない。結局亜印さんは僕に何も話そうとはしなかった。
『だからしょうがない?』
ああ。
だって僕には多分無関係なんだろうから。
僕は僕の肩に顎を乗せクスクスと楽しげな早百合に素っ気なく告げる。
『可哀想お兄ちゃん』
クスクスクスクスと笑顔を振り撒く早百合は本当に心から楽しげに見えた。
『バカ過ぎて可哀想』
「…………」
消えろ。
僕は呪文を頭の中で唱える。
これ以上は無いほどのスピードでただひたすらに。
『もうソレ無理なんじゃない?』
そんな事ない。
僕は何度も救われたんだ。
『これ』さえあれば僕はギリギリ生きていけるんだ。
『そろそろね。待ってるよお兄ちゃん』
「……」
早百合は不意に消える。
呪文が効いた訳じゃない。僕を死に誘う『必要が無くなった』んだ。
感じた事の無いような落下感を振り切りつつ、僕は家へと向かう。
誰も待っていない家へ。
することはひとつ。
他には何も考えられない。
僕だけ生き残った事故は、まだ終わっていないんだと早百合は執拗に迫った。
何年も何年も。
学校には通っていたのが不思議な程、思いが無く……当然のように休む事にする。
僕は
漸く、死ぬのかと。
明け始めた空を見上げて思った。
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