謎と恋と投身自殺

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頭痛と吐き気で視界が歪む。 僕はバイトを終え酒とタバコの染み付いたビルを出ると、サラリーマンの大群が足早に会社へ飲み込まれて行く所だった。 珍しい事では無い。 今日もこのまま学校へと直行だな。 「ォぅ」 電柱に胃から逆流した酒をぶちまけた。 固形物は何も無く、ただただ酒臭い。 『お兄ちゃん』 一体なにしてんだ、とこんな朝は思う。 生きていて良いことなんて有り得ないと思える、そんな朝。 『お兄ちゃん』 そんな朝には決まって妹の早百合が顔を出した。 『つらい?』 そうでもないよ。 割に楽しくやってる。 『友達もいなくて?』 クスクスと早百合の肩が揺れる。確か死んだのは6歳の時だが、彼女は姿を現す度に成長していた。 『さっきの女のヒト死ぬよ。残念だったね』 別に……いい。 特に思い入れがあった訳じゃない。客と従業員。それだけ。 『そうなんだ』 興味も無さそうに呟くと早百合は思い出したように手の平をポンと叩いた。 『でさ』 吐き気はまだ収まらず、僕は電柱に寄りかかり早百合の言葉を背中で聞く。 『お兄ちゃんはいつ死ぬの?』 またか。 出てくる度に毎回同じ質問をする早百合は、それでも毎回目を輝かせて僕に問う。 『ねえ、いつ?』 そのうちな。 僕は毎回同じ答えを心の中で返す。 『生きてるのにいつも死んだフりなんかしてさ。早くこっち来ない?』 ……そのうちな 僕は同じ答えをバカみたいに繰り返す事しか出来なかった。
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