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意外とでも言った感じで爺さんは聞いてきた。婆様……そんなに睨まないでくれ。バカな事だということはわかってる。
「オレの事で悲しんで欲しくないし、それに婆様が止めたって絶対に姉貴たちはオレが死んだなんて事知ったらオレを追って死ぬだろうしな。」
それはもう……絶対に。100%中の100%って言ってもいいくらい。
「ぬぅ……。それでは叱ろうにも叱れんではないか……。」
婆様は一応は納得してくれたようだ。けどもラストさんは違うみたいだ。
「Ich bin grausam…….Es gibt keine Rechte, zu mir zu gehen, wenn du dich entscheidest, damit es(残酷だな……。お前がそう決めたなら僕は止める権利がないが。)」
小さな呟き。聞き取れはしたが何て言ったかはオレには分からない。
「え……?今なんて……。」
聞いてもラストさんから答えは返ってこなかった。少しの沈黙。けどすぐに婆様が口を開いた。
「晴香、アヤツは、クロは──いや今はラストじゃったな……。ラスト=ラース(色欲と憤怒)。ラストは心を知る者としてはヌシが許せんかったのじゃな。人一倍優しいしの。」
ま、止める気は無いようじゃがなと軽く笑いながら婆様は言った。
「ふむ。本当にキミは優しいの。しかし儂等、神もあまり現世に関わってはならんから記憶は消すのではなく封印して思い出せ無いようにしたのでかまわんかのぉ?」
「ああ、かまわない。」
オレが返すと爺さんはうむ。と言ったあと何処かから長めの杖を取り出して足下をコンコンッと二回突いた。
「終わったぞ。」
「え……あれだけ?」
もっと爺さんが持ってる杖が光ったり魔法陣を使ったりするような仰々しい物を想像したんだが……。拍子抜けだ。
「うむ。あれだけじゃな。キミが考えておる様な物を儂がするとしたらそうじゃの……キミに儂が持っとる力を全て無理矢理押し付ける位なものじゃの。」
どんだけなんだよ……。爺さん、アンタって人は……。
「伊達に神を何百万年とやっておらんよ。」
「って心の中読むな。」
ホッホッと爺さんは愉快そうにオレの突っ込みを笑っていた。
「で──オレは異世界に転生するんだよな?その異世界ってのはどんな世界なんだ?」
素朴な疑問をぶつけた。ていうか異世界に行くとなったらまずこれを聞かないといけないよな。普通。
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