再会

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 案の定、麻実はいた。  俺の少し後ろで、傘もささずに耳を塞いで小さく震えていた。 「麻……」  名前を言いかけて止めた。  俺は麻実に近付き、道路に落ちたカバンを拾う。  カバンには、あの黒猫のぬいぐるみが付いている。 「西井」  俺は麻実にそう呼び掛けた。  本当は今すぐ、その震える体を抱き締めてやりたかったが……自重した。  俺はまだコイツの担任の先生だ。  そんなことは出来ない。
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