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ほんの一瞬の甘く温かな時間。
夕日は更にオレンジを増し、私達を黒く浮かび上がらせる。
その時、その心地良い静寂を破り、チャイムが鳴り響いた。
途端、
「じゃ、今日はとりあえず帰りなさい」
と言って、急に先生に戻る。
今まで私を温かく包み込んでいた腕は、何事もなかったように離され、私と先生の間には見えない境界線が一本。
そこには、いつもと変わらない先生の顔をした暮田圭介が、真正面から私を見下ろしていた。
何それ!?
今の今までベタ甘だったクセにっ!
と、ちょっと不満気に唇を尖らす。
そして、次の言葉を発しようとした瞬間、そのあからさまに尖った唇を……先生がいとも簡単に奪い去った。
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