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「私ね、少年が嫌いなの……」
突然のカミングアウトに僕は口に含んだコーラを吐き出した。あまりの言葉に目を白黒させていると
「顔は普通だし、頭悪いし、運動だって微妙。協調性ないし、甲斐性もない、オマケに嘘までつく。はぁ……私が勝ち組なら少年は完全に負け組よね……」
そう言ってわざとらしくため息を吐きだす。それが全て真実なだけに僕は認めるしかなかった。
「なるほど、確かに嫌われる要素抜群だ」
と、落ち着いた風な態度で返してみたけど、心へのダメージは計り知れない。流石はTHE正直だ……
「はぁ……私ってついてない」
そう呟いた少女は、多分、哀愁とか憂いとか、そういう感情を瞬時にひねり出せる天才なんだと思う。
でも何故だろう? 少女の言葉からは本当に嫌がっているようなそれは感じなかった。むしろ――
「ねぇ、少年。このままどっか行っちゃおうよ。私、カラオケって行った事ないから行ってみたいんだけど」
そう言って子供みたいに笑う少女につられて僕も思わず笑ってしまう。
「あれ? 僕の事嫌いなんじゃないの?」
「気にしたら負けよ」
「あ、なら後で勉強教えて」
「じゃあカラオケは少年の奢りね」
考えるのは止めよう。少女に色を残せてないならこれから頑張れば良い。だって僕はまだ少女の嘘を聞いていない。なら少女に付き合う理由はそれだけで良い。
立ち上がって見上げた空は、どこまでも澄み渡っていた。
綺麗な蒼色に――
―fin―
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