嘘の定義

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  退屈で大して興味の無い授業を6時間も受け、待ちに待った放課後。いつものように屋上のフェンスにもたれかかって黄昏てると、屋上への重い鉄の扉が鈍い軋んだ音を奏でながら開いた。 音に反応して視線を向ければ、そこにいたのは学校1の美少女と名高い少女。 なるほど……噂通りらしい。 しかし初めて会った、と言うより見た少女は目を真っ赤に腫らして泣いていた。不謹慎ながら、白い肌に垂れる涙はそれはもう綺麗で、今の今まで見ていた情報の事なんて頭から吹っ飛んでしまった。 興味の無い百科事典? くだらない! 1人で屋上にいる自分? くだらない!! 友人関係? くだらない!!! 少女の涙の前では、僕の行動、悩みなんて全てがくだらなく思えた。それぐらい印象的だったんだよ。僕にとっては。 少女は何も言わずに僕の隣までくると、フェンス越しに下を眺め始め、僕は多少のドキドキを隠すように百科事典に没頭した。 お互い何も話さなかった。聞こえるのは携帯のスクロール音と時折フェンスを突き抜ける風の音だけ。 いつまでそうしていただろうか? 気づけばどちらともなく立ち上がり、無言のまま屋上を出ていた。屋上の1つ下の階までは並んで降りて、そこからは別々の階段で降りる。 当然その間も無言。 我ながら笑っちゃうような状況だ。学校1の美少女と2人きりだったのに何かするどころか一言も喋らなかったのだから。男としてどうよ? と思われても仕方ないと思う。 ただ―― もっと笑えるのはそんな関係が一週間も続いた事だ。  
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