1年目

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「彼女にネックレスを買いたいんだけど、その、一人で買いに行く勇気がないんだ」 気は些か弱いが、体格が良く人の良さが全面に滲み出ている風貌をしている健太に彼女ができたのはつい三ヶ月前のことだ。中学に続いて野球部に所属した彼は2年先輩のマネージャーとあれよあれよという間に恋仲となった。恋仲に至るまで、散々相談役として話を聞いたものだ。 「それで、俺に付いてこいって?」 「うん」 身長が180cm近い健太がしょんぼりと背中を丸めている姿は大層面白い。スマホ画面に写し出されているのは買う予定のネックレスらしい。これを買いたいんだよ、と見せてくれたため店舗を見て納得した。大手ショッピングモール内のど真ん中に店舗を構えているブランドだ。全方位より人目につくこともあり、その店で男性が一人で購入しているのを何度か見たことがある。大方、周りの目が恥ずかしいといったところか。 「いいよ。それより健太にそんな可愛いとこがあるなんてな。この姿を彼女に見せてあげたい。絶対喜ぶと思うな」 「やめてくれよ!彼女にはまだプレゼントのことは内緒にしてるんだから」 潤を買い物へ同行させることが決まり、安堵したのか机の横に掛けていたコンビニの袋を出し、ようやく昼食の準備をはじめだした。
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