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何度目だろうか、家を継ぎたくないと思ったのは。
元々、極道というもの自体を嫌っていたこともある。が、それよりも家を継いだ事で一般人の潤に迷惑が掛かると思うほうが大きかった。
いつからかは分からない。自分が女に欲情しない事が分かった頃だったかもしれない。
潤を見る目が明らかに友達に向けるものとは違うことだけは自分でも理解していた。
だが、相手はノンケ。叶うはずのない恋である。
いっそ拒絶されるくらいなら、隣で笑ってくれる幼なじみの枠が一番心地いい。
「大概馬鹿だよな、俺は……」
一人ごちてごろりと寝返りをうった。
風間と大谷の関係を考えれば、潤を抱くことは容易い。そして四六時中傍に居させられることもできる。
だが、その関係に感情はない。虚無だけだ。
俺が欲しいのは潤の身体ではなく潤の心――。
再び寝返りをうって、冬眞は瞼をおろした。
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