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反射的に腕を振り払い、相手と距離を取るようにして向き直った。
相手から全く気配が感じられなかったことに人間離れしている何かを感じ、ぞくりと背筋に悪寒が走った。
「なかなかの腕前だ」
「――っ、あなたは……」
口角を上げるだけの笑みをしているが、以前自宅に来たときと変わらずその男は瞳に冷たさを宿していた。風間秀二だ。
人間のものとは思えない、纏っているその空気があまりにも重く、思わず膝をついてしまいそうになる。
絶対にこの男の前でだけは膝をつきたくない。
その気持ちだけで、今にも折れてしまいそうな膝を叱咤し立っていた。
「成程。どう足掻いても私にだけは屈したくないらしい」
不意に軽くなった空気に身体にのしかかっていた重みが一気に無くなった。
しかし、その事に気を緩めたのが駄目だった。
一瞬で秀二によって部屋の中に連れ込まれると強い力で壁に縫い付けられた。
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