プロローグ

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 カーテンを開け、窓を開ければ、朝の新鮮な空気が入ってくる。 少し先に見える幼なじみの自宅の敷地内の一部を眺めてから口角を上げ、窓を閉めた。 鞄を肩にかけ、身なりを整えてから階段を降りていく。 玄関にある鏡を一瞥して、潤は形のいい眉を顰めた。 母親譲りの二重の大きめの目。色白な肌。筋肉のつかない華奢な体付き。 男だというのに、この女のような容姿が嫌で仕方がない。 「それじゃ、行ってきます」 「いってらっしゃい」 自宅を出たところに咲いている梅の花を見て、鞄をしっかりと肩に掛けなおした。 「おはよう、潤」 「冬眞!おはよ。今日は一人?」 「うん。潤が変な奴に話し掛けられないようにボディーガードに」 ふわりと笑む男は俺の幼なじみの風間冬眞である。 中三にしては大人びた顔立ちをしており、赤みがかっているが指通りのいい長い髪をゆるく片方に束ねている。 家も近く、潤の父親と冬眞の父親が秘書と社長の間柄ということもあり、幼い頃から互いをよく知っている。 「大丈夫だよ。最近は話し掛けられる事も減ってきたから」 「でも、この前なんか連れ込まれそうになったらしいじゃないか」 「連れ込まれる前に股間蹴って逃げてやった」
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