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「それじゃ、迎えに行く」
「分かった」
冬眞と一緒に通い慣れた通学路を帰る。自宅前に着いたときに不意に冬眞が立ち止まった。
「潤、ちょっと待って」
鞄の中を漁りはじめた冬眞の手の動きをずっと眺めていると、その手が止まり拳を差し出された。
「これ、明日の為に」
両手で椀をつくり、差し出すとお守りが手のひらに置かれた。
「これ……お守り」
「絶対一緒に合格しような!」
そう言ってへらりと笑った冬眞の手には自分が持っているのと同じお守りがあった。
「絶対に」
自分に言い聞かすように呟いてから冬眞の目を見あげた。
互いに微笑みあって、約束の代わりに拳同士をぶつける。幼い頃から変わらない自分達の約束の仕方――。
そして迎えた、入試当日。
卒アル撮影以来、初めて服装を校則通りに着てから大きく深呼吸した。
大丈夫、そう自分に言い聞かせ冬眞から貰ったお守りを握り締めた。
速かった鼓動がだんだんと落ち着いてくる。
その時インターホンが鳴った。来訪者は確認せずとも冬眞だと分かる。
用意しておいた荷物を引っ掴むと慌ただしく階段を降りていった。
「それじゃ、行ってきます!」
「落ち着いて、頑張ってくるのよ」
母親の言葉に頷き、玄関の扉を開けた。
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