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「お頭、お帰りなさいやし」
玄関から聞こえた多くののぶとい声に冬眞は読んでいた雑誌から顔を上げた。
「冬眞帰っていたのか」
「まぁね。それより、どこに出掛けてたの?」
「満のところさ」
満とは大谷満のこと。潤の父親である。
潤の父親ということもあって運動会や文化祭では会うことが多い。優しそうな柔和な笑顔が印象的だった。
いつもなら、適当に頷いて終わりだが今日だけはそうもいかなかった。人の為に動こうなどと考えもしない父親が自ら出向いたことに疑問の念を抱いていたこともあったのかもしれない。
「潤くんに例の話をしに、ね」
「あんた、潤に話したのか?」
雑誌を握り潰す勢いで立ち上がり、自分より身長の高い父親を睨み付けた。
「彼も今年から高校生になる。自分の立場を理解できないほど子供でもないだろう。実際、彼は頭が良かったよ」
「ふざけんなっ!あんた人をなんだと思ってんだよ」
「人?男に股を開いてアンアン善がるような家系が、か?綺麗事も甚だしいな」
「それをしきたりとか言って大谷の人間を性欲の捌け口にしてるのはあんただろ!」
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