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ぎぃぃ…… 芙蓉が答えに窮している間に朔が姿を見せた。 夏の日差しを一身に浴びてきたとは思えぬ汗ひとつかかぬままの清々しさで。 しかも。 何故だか窓からの入場。 「ただいまぁ」 「……っうわ…っと、朔……何処から戻ってきているんだか」 朔の突飛な行動に慣れているはずの恭介も呆れ顔を隠せずにはいられなかった。 対する朔はへらっと笑って誤魔化しにかかる。 「撒かれた」 「おいおい……」 「どうしようかなぁ……腹の虫がおさまらないな」 「朔、事を荒立てるな」 「でもね、芙蓉。ここら辺できゅっと締めておかないと奏子殿ますます図に乗りますよ?」 「…………」 芙蓉の瞳は揺らぐ。 「まあ……この件に関しては芙蓉が何と言おうとも数日中には片を付ける算段にしているので悪しからず」 「どうしてそう急く必要がある?」 「敵は片っ端から叩き潰しておかないと……僕が平静を保てなくなると思いますから」 それを避けたいのだと朔は言い、そうしてやはり優しく芙蓉を抱き締めた。 それはいつもより優しくて。 まるで。 壊れ物を扱うかのような繊細な手つきだった。
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