2

7/43
前へ
/321ページ
次へ
「なるほど」 やってみようと芙蓉は台所に姿を消した。 「……なんでも出来るんやな」 「必要に迫られて出来るようになった口でしょうけどね……僕と一緒で」 台所からは例によって例のごとく男前な音が鳴り響く。 幸継は驚き反射的に朔を見るも朔はただ笑うばかり。 意味がわからず台所をそっと窺うと芙蓉は無心に葱を切って……もとい……叩き切っていた。 日本の包丁は力を込めなくても滑らせれば切れるというのに。 「朔」 「ん?」 「包丁の刃すぐにあかんようになるで?」 「まあそれはおいおい覚えていただこうかなぁと」 「早い方がええわ」 「何で?」 「あの勢いで振りかぶってやで、誤って添えた左手切ったらどないや?」 目もあてられへんわと呟く幸継。 朔はサーっと顔色を変え、台所に消えた。 30分後。 芙蓉は思いの外手際よく注文した品をテーブルに並べてみせた。 牛すじうどんにおいなりさん、そうして牛蒡のサラダ。 まるでちょっとした定食のようだ。 「美味しそう」 「熱い内にどうぞ」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

351人が本棚に入れています
本棚に追加