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オーダー通りに緑茶を淹れた朔は幸継の前に置く。
自分は芙蓉と一緒に紅茶を淹れ、ソファーに腰掛ける。
「……お前なあ……綾乃様からの勅命なんやぞ?」
「いらない」
「それは結城を手放さなあかんようにしてもうたからか?」
「それだけではないです。僕に人員を割くくらいなら芙蓉や伶様に付いておいて欲しいだけ」
「実質的に跡取り候補筆頭のお前の護衛が不在っちゅうのが問題なんやぞ?」
「幹部たちはこの件については何も指摘してこないよ?」
意味深長に笑う朔。
「……お前を消すんに都合がええからやろうが」
「でしょうね。分かりやすくて笑える」
クスクスとさも滑稽だと言わんばかりに笑う。
まるで他人事のようだ。
「……笑い事か」
それまで静観していた芙蓉が律儀に突っ込みを入れると朔はまた楽しそうに笑った。
だがそれも束の間。
すっと目を細めた朔は幸継に低く告げる。
「ユキ……たぶん結城は幹部に与している」
「あ?」
「油断せずにかかって欲しい」
「何故そう思う?」
「気配がね」
「今もか!?」
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