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「ただ死ぬだけで。それでいいんですか?」
微かに優しさのこもった口調だった。
私の足が完全に止まってしまう。
「あなた…殺したい相手がいるでしょう」
男の言葉に絶句した。
どうして知ってるの。
「もし良ければ、私が殺して差し上げますが」
「…あんた、だれ?」
身体が震えて、声が出にくい。
男はふっと息を吐き出して薄く笑う。
「"神の葬儀屋"。…世間一般には死神なんて名前があるみたいですけど、私はあまり好きではないので」
「葬儀屋…?」
「あ、葬儀屋って名乗ってますけど、葬儀はしませんよ。あんな面倒臭い仕事は本物の葬儀屋がすればいいんです」
この人、多分頭にキテル。
構うんじゃなかった。
あ、でも…
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