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「ねぇ、透弥くんは、もしも自分が死ぬ時にたった一人の人に
自分の心を託せるとしたら、誰に託す?」
とある休日の午後、本を読んでいた絵里奈がフッと顔を上げて、
恋人である透弥にそう尋ねた。
当の透弥は突然の絵里奈の問いに驚きの表情を見せる。
「如何したんだよ?突然そんな事を言い出して・・・・」
「うん、前に読んだ本に書いてあった事を思い出してね・・・・
その本には、人は死を迎える際にたった一人の人に自分の心を託して
天国に逝けると言う事が書いてあったの・・・だから・・・」
「そうなのか・・・」
「でね、その託された心はその託された人の中でずっとその人と共に生き続けるんですって」
そう付け足す絵里奈に、相変わらず色々な話や知識を本から取り込んでいるのだと、
透弥は彼女に関心をした。元々、絵里奈は読書が好きで色々な本を読んでいた事は透弥も知っていた。
ロマンチックな恋愛小説や童話などの物語は勿論の事、医学書やIT関連の資料や
その他様々なジャンルの参考書など幅広い書物を手に取っては目を通す。
それ程まで幅広いジャンルの書物を読む彼女は勿論、知識や感性はとても豊富だ。
先程、絵里奈が言っていた「人が死を迎える際にたった一人だけ自分の心を託せる」と言う話は勿論の事。
彼女が良く自分に話してくれる「伝説」なども本からの入れ知恵であろう。
しかし、そんな彼女の話を聞く事が透弥はとても好きだった。
まるで子供の様に目を輝かせながら楽しそうに本の内容を話してくれる絵里奈は、
「ただ内容を話すだけ」ではなく、その話の内容に関して彼女本人の意見や考えも
話してくれて、そして今度は、聞き手である自分にも意見を求めてくれて、
それに答えれば彼女もまた返事を返してくれる。
そんな絵里奈とのやり取りが透弥は好きだったのだ。
彼女とは話をしていると、物の捉え方や思案がとても広くなって行くのが解る。
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