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「そうだな・・・そんな事考えた事も無いからな・・・じゃぁ、逆にお前は如何なんだ?」
「私?そうねぇ・・・・」
「もったいぶらずに教えろよ」
透弥の言葉に絵里奈は優しく微笑むと彼に言う。
「私はね、死ぬ時にたった一人だけに自分のこの心を託せるならば、
私にとって一番大切な人にこの心を託して天国に逝きたいわ」
「大切な人?」
「ええ」
「自分の人生の中で一番自分が愛した人で大切な人と
その心は生き続けるならば本望だと思わない?」そう言って絵里奈は微笑んだ。
「――でね、その大切な人とは・・・・」
「・・・絵里奈?」
言い掛けている途中で突然絵里奈が口を噤み、透弥は不思議そうに彼女を呼ぶ。
すると、「なんでも無いわ」と、彼女は笑って首を横に振った。
「なんだよ・・・・教えてくれたって良いじゃないか・・・」
「内緒よ」
何処か残念そうに言う透弥に、絵里奈はクスクスと笑いながらそう返事を返した。
他愛も無い何気ない二人の会話。
でも、それが二人には幸せだった。
大好きな人が隣にいて、一緒に話をして、時に喧嘩なんかもして、
一緒に泣いて、一緒に笑って、時に互いに愛を囁いたりもして――・・・・。
それが当然だし、いつもの事。
でも、それがとても幸せな事で・・・、
いつまでも、ずっと、長く続くと・・・・
そう、思っていた――・・・・。
二人に悲しい「別れの時」が来るまでは――・・・・。
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