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あれから数ヵ月後――・・・・。
絵里奈が風邪を拗らせて入院した二日後の事だった。
透弥の元に一本の電話が入った。
“絵里奈の病状が悪化してとても危険な状態になっている”と――・・・・。
透弥は急いで絵里奈の入院している大学病院へ向かった。
病院の廊下を走る自分に注意する看護士の言葉も耳に入らなかった。
「絵里奈っ!!?」
バンッ、と、勢い良く病室のドアを開ける。
すると、沢山の医者や看護士、絵里奈の両親と彼女の弟だろうと思われる人物が
透弥の方へ視線を向けた。
荒い呼吸を整えながら透弥はベッドの上に横たわる絵里奈に視線を向けた。
ベッドの上に横たわる彼女は、余りにも痩せ細り、弱りきっていて――・・・・。
透弥は余りの彼女の状態に涙が溢れた。
「・・・・とう・・や・・くん・・・」
「!」
呼吸器をつけ、苦しそうに息をしながら自分を呼ぶ絵里奈の声に、
透弥は彼女に近寄り彼女の手を握る。
「透弥くん・・・」
「何だ?」
「ねぇ、あの時の事・・・前に私が貴方に話した本のお話の事を覚えている?」
「嗚呼、覚えているさ」
“本のお話の事”とは、きっと数ヶ月前に絵里奈が自分に話してくれた
「人が死ぬ間際にたった一人の人に心を託して逝ける」と言う話の事を指しているのだろう。
それは、透弥も理解していた。
そして、彼女は苦しそうに息をしながらも、続けた。
「実はね・・・あの時、私が言い掛けた事・・・それは、私の一番大切な人の事なの・・・
そして、その大切な人とは・・・・透弥くん・・・貴方の事なのよ・・・?」
「え?」
絵里奈の言葉に透弥は驚いた。
まさか、彼女がそんなにまで自分を想っていてくれていたなんて――・・・・。
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