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ギュッと、絵里奈の手を握る手の力が強くなる。
すると、彼女は透弥に言った。
「ねぇ、最後に・・・わがままを・・・言わせて?」
「何だ?」
「私の心を貴方に託させて――・・・?」
「絵里奈・・・」
苦しそうに息をしながらも、絵里奈は優しく微笑むと、続けた。
「私ね、貴方と一緒に居られてとても幸せだったよ・・・・。
――透弥くん・・・今まで有り難う・・・」
それだけを言い残すと、絵里奈はその瞳を閉じ、まるで眠ったかのようだった。
「え・・・・?えり・・絵里奈?」
不思議に思い、透弥が絵里奈に声を掛ける。
が、その直後だった・・・。
煩い位に大きな電子音が病室中に鳴り響き、
同時に、医師の一人が「ご臨終です」とだけ告げた。
その言葉に絵里奈の家族は崩れ落ちた。
しかし、透弥にはその医師の言葉や絵里奈の家族の嘆く声でさえ耳に届かず、
ただ、ひたすら彼女を必死になって呼んだ。
しかし、透弥の抵抗を嘲笑うかの様に、絵里奈は綺麗に眠っている・・・・。
まるで、糸が切れた人形のように――・・・・・。
「絵里奈っ!・・・嘘だろ?嘘だと・・・・嘘だと言ってくれよっ!!・・・・絵里奈ぁ・・・」
「っ・・・・・うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
透弥は絵里奈の躯を抱いて大声を上げて泣いた。
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