彼女と私と、時々ゆうやけ

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いつまでも同じ時間には居られないよ。夕焼けが頭のてっぺんをちょっぴり出して、そう言った。 私は高校生になって、伊織も高校生になった。いつかの傷口だって消えてしまってるはずなのに。 「・・・・・・伊織は変わらないね」 それはどんな意味だったんだろう。自分でも分からなかったけれど、きっとそのことが私と伊織を繋いでいたんだろうと思う。 「好きって言ったら、・・・・・・どうする?」 「・・・?」 「私が伊織のこと。こんな風に好きって言ったら」 少しだけ力を込めた。 腕の中の伊織がさらに密着して肌に感じる熱は急上昇して。ほんの少し心拍数を上げる。 唇を合わせても良かった。でもそれはなんとなく自重して、久しぶりに至近距離の伊織の瞳を覗き込んだ。それはとても綺麗だった。 「んーとね、ずっとこーしててって言う」 普段より5割減の殊勝な伊織の声を聞いて、ちょっと笑った。 胸の中でくすぶっていた黒いすすみたいなものは夕焼けに溶けて消えたみたいだった。もう少ししたら星の欠片みたいに笑えるかもしれないなんて。 明日からもきっと、私たちはそんなに変わらないんだろうなぁと思う。 でも一歩進んで。 でも幼なじみ以上恋人未満の曖昧な関係で。 2人で居れば、また汚れた私が顔を出して伊織を困らせるんだろうけど、その時はまた伊織が一緒に笑ってくれるんだって期待して。 それきらいは好かれてるだろうな、なんて少しばかりの自惚れも右手に込めて。所在なさげな伊織左手を握った。 「帰ろう、千佳りん」 「うん」 真っ赤な世界に、2つの影。 ぎこちなく、ゆらゆら揺れながら。2つは離れないでいてほしい。 少し目線を下げて、同じ調子の4つのつま先を眺めながら私は幸せでいたいと思った。 END
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