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「咲って可愛いよね」
「何?急に」
「そう?いつでも想ってるよ、私は。咲のこと」
「恥ずかしいこと言わないでよ」
「えへへ、私も恥ずかしい」
夕焼けのせい?
それとも私のせい?
彼女は顔を真っ赤にして、何かを期待したように笑ってる。
一度だけ風が吹き込んで、私たちの髪を揺らしながら駆け抜けていった。
もうすぐナツだって思ったりして。綺麗に笑う君はやっぱり私の好きなナツだった。
「よしっ、おしまい!」
「じゃあ帰ろっか」
「うんっ、ありがとうね、咲」
「これで最後だからね?」
「うっ・・・はーい」
しょんぼりして肩を落とす彼女の腕を引き寄せて。驚いてる彼女の顔に満足しながら。
ぐっと唇を重ねた。
柔らかな唇の下に歯の感触が分かるくらい、突然の不格好なキス。
でもそれでも私の気持ちは伝わってくれるといい。まだ高校生の私たちに大人なキスなんて出来ないけれど、安っぽい愛を込めたキス位なら唇に乗せて。
「・・・・・・咲ぅ」
「何?」
「・・・・・・好き」
「うん、知ってる」
「咲は?・・・私のこと、好き?」
好き、だよ。
私は決して口にはしないのだろうけれど。そんな自分に少しばかり苛立ちを覚えないわけではないけれど。
キュッとナツの小指を引けば、自然に寄りかかってくる彼女の熱を離さないようにして。
そっと唇を合わせること。それだけで私の溢れんばかりの想いは伝わるらしいから、いいかなと思う。
「またキスで誤魔化すっ!」
「じゃあ、もうしない」
「ちょっ、それは・・・」
「ナツったら、どうしたの?」
「うぅ、咲はズルいよ」
「ありがとう」
「誉めてなーいっ!・・・・・・一回くらい好きって言ってくれたっていいのに」
「はいはーい」
「あっ、勝手に帰らないでよーっ!」
やっぱり熱いのは苦手。
それは何に関しても一緒らしくて、この身を焦がすようなナツへの気持ちだってどうしたらいいのか分からないくらいなのに。
きっと熱さのせいだけじゃない汗を拭って、後ろから来たナツと肩を並べる。また体が熱くなった気がしてちょっと歩幅を狭くした。
バカ、好きだよ。
このナツの熱さも、苦しいくらいのこの想いも、勝手に跳ね上がる自分の体温もひっくるめて。
全部全部、大好きだよ。
END
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