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授業中に居眠りをした挙句、寝ぼけて夕鶴に抱きつき教室中を騒がせたとして、
カイは廊下に立たされていた。
「ちぇー・・・岡田の奴、思いっきり頭を殴りやがって・・・」
未だに鈍く痛む頭を摩りながらカイは文句を言う。
しかし、元はと言えば、授業中に居眠りをしていたカイが悪いのだが・・・・。
「でも・・・俺と夕鶴の子供・・・・かぁ・・・」
ポツリと、先程見た幸せな夢を思い出し独り言を言う。
其れが現実だったら、どんなに幸せだっただろうか・・・・。
夢の中の自分は、隣に最愛な夕鶴が居て、その夕鶴との間に子供が出来て、
幸せな家庭にしようと彼女と約束し、まさにそのスタートを歩もうとしている姿だった。
所詮は唯の夢だと、普通ならそう思う所であるが、
しかし、先程見た夢は「唯の夢」ではない――・・・・・。
そう、カイは薄々と感じた。
今はまだ見えない先の未来ではあるが、きっとこの先・・・。
何年、十何年と先の事になるとは思うが、
きっと、そんな幸せな未来が自分を待っている・・・・そんな気がした。
「(だが、その未来を手に入れる為には、まずは夕鶴自身を手に入れないとな・・・)」
そう、未だ気持ちが伝わっていない想いの人物に対しある決心をすると、
カイは薄く微笑み廊下の窓から空を見上げた。
窓から見えるのは、雲ひとつ無い青空が広がる平凡な平日の午後の空。
カイの見た夢が現実の物となるのも、そう遠い未来の話ではないのかもしれない――・・・・。
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