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「……相沢さん、大丈夫?」
白猫を抱いて立っている雪は、梨歩を見下ろしてそう聞いた。
「……あ、はい。大丈夫です」
体のどこにも痛みがないことを不思議に思いながら上体を起こすと、下から潰れたカエルのような声が聞こえる。……そういえば、地面にしてはやけに温かくて柔らかいような気が……。
「…………ゴメン、俺ちょっと大丈夫じゃない……」
「あ、すっ、すみません!!」
飛びのいて、慌てて謝ると、俯せの状態で潰されていた東吾が背中を押さえながらむっくりと起き上がった。
「……あ、いや相沢ちゃんはそんな重くなかったんだって!…………ただ、相沢ちゃんが落ちたときに俺を容赦なく蹴り飛ばした奴がいると思うんだけど」
「ああ、ごめん。動きが遅いから間に合わないかと思って」
張本人があまりに堂々としていたので東吾もそれ以上は何も言えずに……だが恨めしそうに雪を見ている。
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