それはきっと宝物

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 悠が頷くと、東吾はまだ痛そうに額に手を当てながらひょっこり起きあがって、不満そうに言う。 「納得すんなよ。俺だって最近はちょっと頑張ってんだぜ?相沢ちゃんからノート借りたりしてるしー、な、相沢ちゃん!」  いつもながらの三人の話(コント)だと思っていたので、第三者だった梨歩は突然その中に放り込まれて戸惑った。放課後の教室の中、周りは口数も少なくそそくさと帰り支度をしていて明らかに『関わりたくない』と思っている雰囲気が伝わってくる。 「…………相沢さんに頼む辺りが東吾ですよね。下心が透けて見えてます。 相沢さん、こんな奴にノート貸すの嫌だったら断って良いんですよ?」  言うべき言葉を探してオロオロとしている梨歩を見兼ねたのか、悠が助け舟を出した。 「……い、いえ別に嫌じゃないですから……」 「ほら、相沢ちゃんは嫌じゃないって。大体さー、お前らのノートは性格が出てて嫌なの。 悠はテストに出そうなトコだけ集中的にチェック入れて、この先生はコレ出す!って傾向徹底的に分析してるってか、何かえげつない。 雪は無駄に細かいし、習ってねえ解き方平気でしてるし、英語のノートとか全部筆記体で読めねーもん。 それに比べて、相沢ちゃんのは人間味と暖かさが溢れてる!見る人に優しいぜ?お前らと違って」  やっぱり人間性出るよなー、とけらけら笑った東吾に、悠と雪は無言で彼の頭を掴んだ。……二人とも、一見誰もが見惚れてしまうような飛び切りの笑顔で。 「…………人のノートにケチつける前に」 「……自分でノートをとろうとは思わないの?」 .
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