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「…………あの……」
数分後、東吾は二人にぐしゃぐしゃにされた頭のままで教室の隅に体育座りをしていた。漂う空気がどんより重かったが、さっきの叫びが気になっていた梨歩が話し掛けると、飼い主に尻尾を振る犬のような元気を取り戻す。
「何?相沢ちゃん!」
「……『無い』って、言ってましたよね?何か、無くなったんですか?」
梨歩が聞くと、後の二人も、ああ……と思い出したようにぽん、と手を打った。
「そうなんだよ!!俺の命の次に大事なお守りが無くなったんだ!!」
「…………はあ?」
「…………お守り?東吾、そんなもの持ってましたっけ?」」
「持ってたの!!…………俺が小さかったときに、ばあちゃんがくれたお守りなんだよ…………どうしよう、俺……ばあちゃんにずっと持ってるって約束したのに…………」
そこまで言うと一転してまた落ち込んだ東吾。……よほど大切なものなんだろう、もしかすると祖母の形見の品だったりするのかもしれない。
「…………探しましょう」
「へ?」
「探しましょう!私も手伝いますから!……そんな大事なもの、無くしたままなんて絶対駄目です」
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