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「………………ありました…………けど……」
『けど』、その後が大変なのだ。
「…………まあ、見つかるのはやけにあっさり見つかったというか……拍子抜けですね」
……そう、東吾の大切なお守りはあっさりと見つかったのだ。場所は東吾が昼休みに寝ていた学校の裏庭。しかし、雪はやれやれとでも言いたげにため息をつく。
「この状況でよく言うよ。拍子抜けしたなら悠が登れば?」
「…………雪?僕が運動全般不得意なの知ってて言ってるでしょう。……ここは原因の東吾が行くべきですよ」
「よっし、じゃあ俺が一丁取り返しに……」
「馬鹿、君みたいな筋肉ダルマが登ったらあんな細い枝、ぽっきり折れて真っ逆さまだよ。……それでも行くなら僕は止めないけど」
じゃあどうしろって言うんだよ、と東吾は上を見上げた。
裏庭の枯れかけたような木の決して太くはない枝、そこにに登って降りられなくなっている白い子猫の口には赤いお守り袋のようなものがくわえられている。
「何回か揺すったら落ちてくるんじゃないですか?」
悠が何やら危険な匂いのする言葉を呟いたが、東吾が子猫の可愛さと動物愛護の精神について語り始めたのでひとまず振り落とす案は没になった。
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