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「……無理はしないでよ。出来ないことは出来ないって言わないと、周りにも迷惑かけるんだからね」
登る前、雪は心配しているのか、それとも面倒なことになるのが嫌なのか分からないような言葉をくれた。東吾と悠に言い方がキツイ、そんなだから絶対零度なんてあだ名がつくんだと言われても気にする様子はない。
「……ありがとうございます」
『心配』だと解釈してお礼を言うと、彼は何故か眉を寄せて不機嫌そうな顔をした。
「……人が良すぎるよ。何でも良い方にとるんだから」
そんな声が微かに耳に入ったが、聞こえなかった振りをした。
……臆病で、気が弱くて、お人よし。でもそれが確かに自分なのだ。
一度、深く深呼吸をする。高い所は嫌いだ、でも、自分で行くと決めたのだから、行かなければ。
目を閉じると、思い出が瞼の裏にそっと浮かんできた。
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