それはきっと宝物

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 小学生の頃は、学校から帰った後の時間のほとんどを祖父母の家で過ごしていた。  両親は共働きで忙しく、人見知りする性格では近所に遊び友達もいなかったのだ。  その代わり陽の当たる縁側で祖母と本を読んだり、祖父の膝に座ってテレビの時代劇を見たりするのが好きで、今思えば少し変わった子供だったのかもしれない。 『……梨歩ちゃんは優しい良い子だから、ばあちゃんが良いものあげようかねえ』  そう言って手に握らせてくれたのは、ひんやりと冷たい、綺麗な翡翠色の石だった。 『ばあちゃんの宝物。きっと梨歩ちゃんを守ってくれるから……』  石の冷たい感触と、しわくちゃな笑顔は記憶に焼き付いたように離れない。  祖母はその半年後に息を引き取り、梨歩は焼かれて白い小さなカケラになってしまった彼女を、訳も分からずに泣きながら送った。 .
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