第一話

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こんなに我慢が出来なかったのは初めてのことだ。 「ほら、怒ってるのあんたじゃない。なんでも私のせいにしないで欲しいわ」 「なっ!!」 嘘だろ……悪いのは俺なのか? いや、違う。 今の俺の気分は、横断歩道を手を挙げて歩いていたのに車にひかれて、めっちゃ痛いから救急車呼んでもらったのに軽傷。しかも何故か車で突っ込んできた人の方が重症で警察に怪しまれているような感じだ。 うん、関係ないですよね。 「まぁ今回は特別に許すわ」 「……う、うん。ありがとう?」 「気にしないで。で、あんたを呼び止めた理由なんだけど」 「ああ、なんで止めたんだ?」 「今から言うわよ。そんなに焦らないで」 「別に焦ってはない」 確かに話をさえぎったのは悪かったけど、一々返し方がめんどくさいなコイツ。 「はいはい。で、話っていうのはね、明日の一日だけでいいから彼氏役して欲しいの」 「…………ん? 何故に?」 「実はさあ、私って何気にモテるのよ。じゃあバイバイ!!」 「いや待て待て待てぇ!! 全然説明になってませんよ!?」 危ねぇよ。普通に何も分からないまま取り残されるとこだった。
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