桜井と佐野

3/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
温かい車内と、心地よい揺れが私の眠りを誘った。仕事の疲労感もあったのかもしれない。 彼の待つ街、十三へとことこと線路を走る30分の間に、夢を見た。小学生の頃の遠足の夢だった。 小学四年生の少年少女がバスの中で姦しく笑っている。引率の先生は檻の中で騒ぐ生き物を窘めるように声を張り上げている。 座りなさい、静かにしなさい。私はクラスメイトに合わせて騒ぐ彼らを模倣して、一際大きい声を出し、そして笑っていた。 次の夢は中学生の頃、初めて恋をした夢だった。 好きになった少年の後ろを、うつむき加減に歩く私は恋をする女の顔をしていた。 前を歩く少年の横には、同じ学年で一番勉強ができて運動も出来る、そして笑顔が可愛く漫画のヒロインを絵にかいたような、女の敵を体現する女の子が並んでいた。 彼女の名前は何だったか、もう覚えていないけど。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!