桜井と佐野

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十三駅到着の車内アナウンスで現実世界に戻された。 覚醒しきっていない夢うつつの足取りで、私は電車を降りる。ホームに取り残された私は梅田へと去っていく電車の風に目を瞑った。 豚まん、豚骨ラーメン、鯛焼き、下水。全ての匂いが詰まった町に降りていくのだ。私は。 改札に切符を通すと、西口を降りたすぐのたこ焼き屋を背景に、マスクを付けたPコートを着た彼が立っていた。 「お待たせしました」 「そんなに待ってないけど」 「それじゃあ、行こう。コンビニ寄る?」 「いや、あっちの店の方がいい。行こう」 パチンコ屋のけたたましい音楽が鳴り響く商店街を抜け、交差点の信号を渡った。
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