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交差点を渡りきり、二人並んで、黄色に黒字の文字が目立つ量販店へ向かった。
平日の今日でも居酒屋の呼び込みは絶えない。客足が少ないからだと思うが、それにしても客引きのアルバイト達は競うように大声を張り上げていた。
そんな客引き立ちが取り出す全ての割引券を無視して、彼は真っ直ぐ目的の店へ歩いて行く。
がちゃがちゃとした店に着くと心なしか安心したような、嬉し気な表情が彼に生まれた。
「やっぱりいいよな、ここ」
「そうだね。童心に戻れるよね」
実際に私も、この店の物が迫ってくるような、天井まで届く鬱蒼としたディスプレイは決して嫌いではなかった。
店の中での主役はこの商品たちなのだと認識させられるようで、私の体も心も隠してくれる。
店員の流れ作業もその表れだと、いつも思っていた。だから、どんなに無愛想で私と目を合わせなくても許せるのだ。
階段を上がってすぐの、じゃらじゃらと光る家電コーナーのうるさい光は、私の事をよそ者だと知っているようだった。
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