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「佐野、早く起きて。遅刻する」
「うん、ああ、おはよ桜井」
これだけ付き合っても、気安く名前を呼ばない佐野が私は好きだ。
自分の名字、桜井の姓は気に入っていた。
「井」は書く時にバランスを取りにくいのが難点だが、「桜」は日本人らしくて何となくいいと思っていた。
由貴という私の名前は、母親がなにかから取ってきた名前だった。
何かはよく分らなかったが、特に聞きたい訳ではなかったので自分から尋ねたこともない。
恐らく昔好きだった男の子か、芸能人の名前だと思う。私の母はそういうものを大切にできる人なのだ。
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