Prologue

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七日間、眠ることもなく歩き続けていた旅人は最後の雪山を越えるとその歩みを止めた 雪山を越えた途端に氷雪の嵐は和らぎ、旅人の目の前には夜空に浮かぶ月に照らされた真っ白な雪原が広がっていた 旅人の立っている雪原から一㌔程先には針葉樹の森が見えている 旅人は後ろを振り返り越えてきた山脈をしばらく見つめた後、再び歩きはじめた 吹雪の止んだ雪原には旅人が雪を踏み分ける音しか聞こえなかった 雪原の中央に差し掛かった時、雪を踏む音に紛れて小さな音がした ―ヒュンッ その音が聞こえた瞬間に旅人は身体を横にずらし、飛んできた弓矢を躱した 弓矢は旅人の被っていたフードを射抜き、雪原に突き刺さる 旅人は若い青年だった 銀色の髪と褐色の肌をした青年は弓矢を一瞥すると、青い切れ長の目を細めて矢の飛んできた方向を見つめた 青年は弓矢が飛んできた辺りの雪原のある一点を見つめると、左の手袋を外し、左手を空気を切るように動かす ─パンッ 何かが弾けるような音がした後、青年から数百㍍離れた場所に弓を構えた二人の兵士と杖を持った兵士が姿を現した .
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