第一章 強き者

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集落へ戻れば出迎えてくれたがそれは同じ出身というだけである。 彼、陰弘は一軒の平屋へ入ると自ら傷つけてしまった箇所の手当てを始めた。 平屋には誰もおらず生活に困る事は無い程度に清掃や食料は確保されていた。 手当てを終え、修行後の食事を取ると決まって彼は外にある一本の木に上がった。 「今宵は下弦の月か……」 その木は月見をするのに最適な場所であり、怒れた心を鎮める為に通う所であった。 本来ならば危険な任務を請け負っていてもおかしくはないはずだが彼は決して長から同意されなかった。 その理由は彼自身にあり、彼は特長が無いのである。 忍には何かしらの特長がある、体術や技術に優れている者。特殊な術を持つ者といった具合だ。 だが彼は忍が学ぶ体術、技術は並であり忍術は全く使えないといったものであった。
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