カーテン

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 私は売れない小説家だ。今日も朝から自分の部屋のデスクに座り、原稿用紙と睨めっこしている。  考えに煮詰まり、疲れた時はふと窓の外を見る。向かい側の家の窓に、つい最近掛けられたユラユラと揺れるカーテンが見える。  私は何故か、あのカーテンを見ていると心が落ち着くのだ。何より柄が美しい。純白な白。見ているだけで心が真っ白になったように気が鎮まる。  不思議なことに、そのカーテンが閉じられているのを見た事が無い。あんなに美しいカーテンをなぜ使わないのか疑問だ。  それにあの家の住人を見た事が無い。こう毎日のように窓を眺めていたら人影ぐらい見るはずだ。  しかし、私は一度もそういうものを見た事が無かった。  誰も住んでいないならいっそのこと、あのカーテン頂いてしまおうかな、などと馬鹿な考えをしながら家を眺めていると玄関の前に人がいるのが見えた。  二十歳半ばぐらいの男性は何度もチャイムを鳴らし、家の住人に向かって何やら訴え掛けているようだ。
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