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せいやが七英雄の名を唱えた事は誓いとして重大な意味を持っていたが、なちがその事を知る筈もない。
「僕もお前も道具を使わない内は、互いに降参が認められる事とする。僕が降参する時はお前を解放し、もう二度と追わないと誓おう。お前が降参する時は、今手元に渡した紙を模写しろ」
なちの視線はせいやの言葉に釣られ、コピー用紙に注がれる。
そこにはワープロ文字で「此の度の一連の事件は全て私、冴木なちが悪く、その責任を取る為にどのような事も受け入れるつもりです」というような意味合いの文章が刻まれている。
「僕は本当の死、お前は社会的な抹殺。これほど面白いゲームはないだろう?」
言葉ではそうは言っているが、これはあくまでボイスコードを通しての事。
当の車椅子の男は口元ひとつ動かさず、微かな笑いでさえもその表情に浮かべない。
なちの思考はスヴァローグの考察から始まる。
この圧倒的不利な状況の中で、せいやの言葉の真偽を疑っている余裕はなく、またせいやが嘘をつく必要もないからだ。
本当に自分が邪魔ならば、ゲームなどをせずに自分を警察に突き出すなりして排除してしまえばいい。
よって、せいやのゲーム提案は人を見下す人間の奢りによる、深い意味のない道楽のゲームだと判断した。
もっとも、なちにとっては憎い相手を殺す為のチャンスとなる。
冴木なちはヒドゥンサバイバルが始まって初めて、「本当の意味で」相手を殺す事を望んだ。
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