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その少女はネットで配布された写真よりも幼く見えた。
写真ではポニーテールだったが今は結んでいた髪を解き、その長い髪が腰あたりまで垂れ下がっている。
学生服らしき服は黒と赤で異様に変色していて、そのあどけない顔は薄汚く汚れている。
だがしかし、例えどれだけ風貌が見るに耐えないものだったとしても、普通ならばこの少女が大量殺人犯であるとは信じられないだろう。
事情を知らない者でさえも、彼女が凶悪な犯罪者だと信じざるをえない状況がそこには在った。
およそ身動きひとつ出来ない筈の少女。だが頑なに彼女は「それ」を手離そうとはしなかった。
二宮せいやを除くその場の誰もが、その異常な光景に逃げ出したいと思っていた。
「何が、何がゲームだぁっ! 全部私から奪っておいて、何をふざけた事をっ!」
手負いの獣。
月並みながらその表現がぴったりの彼女は、その左手に男の子を模した人形を握っている。
もっとも、人形は真っ赤に血塗られていて表情すら掴めない。
そしてその右手には……。
「それは母親か?」
サングラスの奥から、せいやは静かに問うた。
「お母さんは、お母さんは絶対に護るんだっ! 私が家族を護るんだぁ!」
『人間の頭部』らしき物体を抱え、冴木なちは絶叫にも近い声を吐いた。
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