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「私の世界をか……えせ……」
「さあ、選べ。敗北か選択か」
這っている裸の少女は苦しそうに呻いていたが、時を待たずして右手の人差し指を一人の男の方へと向けた。
「その人間が持っている道具でいいのか? こんなにも早く僕の道具が推理出来たわけじゃないだろう?」
「…………」
解ろう筈もない。
また考えるのを止めたのでもない。
なちの思考は既に常人のものとはかけ離れていたが、だからこそ怯えや不安という至極真っ当な感情を生まず、機械的に冷静な判断を導いていた。
最初の一回は気にせずとも大丈夫。たかだが一メートルに満たない距離が縮まったところで、状況は何も変わらない。
冴木なちがスヴァローグを直接見るのは初めてだが、前にするのは二回目だ。
瀬良ようこと対峙した時に彼女は確実にスヴァローグを持参し、それを取引材料として持ち出してきていた。
あの場で持っていると嘘をつく事は無意味だったし、協力者ならば当然の事に爆破阻止する為に持ち歩いていただろう。
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