高鳴り

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俺には龍志の後ろ姿しか見えていないが、その優しい声から、龍志の顔の力が抜けいる事が分かる。 その声は俺の心臓まで届き、体の内からジワジワと温かくした。 龍志は剣道部だ。部活が無い日は、いつも俺を誘って「一緒に帰ろ!」って言ってくれる。 俺はその一言を聞くたびに、嬉しさで体の中がいっぱいになった。 今回もそうだ。 しかし、そんな気持ちとは裏腹に、俺の口は勝手に 「悪い……今日は独りで帰りたいんだ」 と言って、優の誘いをいつも拒(こば)む。 学校一の嫌われ者の俺と、正反対の龍志が一緒に居て龍志まで嫌われたらいけない。 俺の大切な親友だから。 俺が誘いを断ったのを聞いた龍志は「そっかぁ……」と、先程の優しい声のままで呟いた後 「気をつけて帰るんだぞ!」 と、元気な声に戻り教室を出ていった。 その声とは逆で、その後ろ姿には力は無かった。 龍志を見届けた後、俺は再び帰る準備を始めた。 ────
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