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濃い濃いオレンジ色の空の下。
独りの少年が川のすぐ傍の砂利の上で寝ている。
少年の体は、この風野川(かざのがわ)に体の右半分を浸け、左半分は水に濡れた砂利の上にあった。
「綺麗だぁ」
少年の完全に力が抜けている声は力無く、息を吐いた様に、その綺麗な空に消えていった。
傷だらけの少年は、静かに空を見上げている。
そして、誓った。
目に映る綺麗過ぎる空に。
「俺もぉずっとぉ……ずっと綺麗でいてぇ……」
声が消えると共にゆっくりと目を閉じた。
そして、頬の傷を撫でながら、もう一度、目を開き、空を目に映した。
「ぜってぇ、綺麗でいる」
少年の声はもう、息の様に消えていなかった。
少年は自分の心臓辺りを服の上から右手で強く掴んでいた。
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