5人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、少年は自分のクラスを目に映した時、目からは力が無くなり、ホッとした表情に変わる。
彼はそのままの表情で、この学校=風並高校(かざなみこうこう)に入った。
少年が目指すのは2階。少年のクラスの2年3組だ。
少年は教室に辿り着くまでは誰とも遭わなかった。
なぜなら、もう30秒くらいでチャイムが鳴るから、他の奴はもう教室に入っている。
ガラガラッっと嫌でも鳴ってしまうドアを開けると、少年の顔は無になり、表情からは何も読み取れなくなる。
ガラガラッっと音に反応したクラス中の人は皆少年を見詰める。
その視線はまるでナイフの様に鋭く、少年に切り掛(か)かる。
何とか表情に無を貫(つらぬ)くが少年の心は傷だらけだ。
そこに追い撃ちを掛ける様に言葉の雨が、少年だけに降り注いだ。
そう、陰口(かげぐち)だ。
それも人間が一番嫌とする、本人に聞こえない様に言おうとヒソヒソする癖に、本人にしっかり聞こえる様に話す。
聞こえなさそうで聞こえる……それが、一番卑怯で、一番相手を傷付ける。
最初のコメントを投稿しよう!